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【UTTOCOな人】安藤準佑さん_vol.39 2021



 京阪墨染駅近くにある小規模保育園「伏見いろどり保育園」。小規模保育園だからこそできることを大切にしながら運営されています。今回は、園長である安藤準佑さんにインタビューしてきました。



自分たちでつくる保育園


Q.伏見いろどり保育園は、どのような保育園か教えていただけますか。また、ご自身で保育園をつくられたきっかけはどのようなものでしょうか。

 開園して4年目の夫婦で運営する小規模保育園です。私は、保育の仕事に10年以上携わっています。結婚し、娘を保育園に預ける際に、今まで自分が携わってきた保育とは異なる保育を目の当たりにしました。保育や子育てには正解がないこと、それがおもしろいと思っています。そこから京都市外や京都府外の保育園をみたり、保育制度を勉強したりしました。そのなかで自分たちのやりたい保育が見えてきて、いつかつくってみたいという話をしていました。

 2015年に制度がかわり、小規模保育園が社会福祉法人、学校法人でなくてもつくることができるようになりました。もともとは、大きな保育園をつくりたいと思っていましたが、当時は小規模保育園をつくることしかできませんでした。実際に小規模保育園を運営するなかで、一人ひとりに寄り添い関わる場所であることがわかりました。単に少人数であるだけでなく、先生の数が多い、子どものペースに合わせて接することができるなど、保育しやすい環境にあると感じています。

 核家族化で保護者も子育てにとても不安をもっておられます。悩みごとを気軽に保育園の先生に聞くことができ、先生と保護者の距離が近いことも特徴です。そのため小規模保育園は、今の時代にあった保育園だと感じています。


Q.子どもたちにとって楽しい取り組みがいくつもあるように思います。そのなかの1つに「いろどりキッチン」があると思うのですが、どのような取り組みでしょうか。

 伏見在住の方で食育の絵本を作っておられる方がいらっしゃいます。さまざまな保育園や幼稚園で食育の取り組みをされていたのですが、コロナの影響で実施することが難しいと悩んでおられました。

 一方で保育園は、コロナ禍でも通常通り開園していました。それならば、通常通りの保育を受ける権利が子どもたちにはあります。過剰な自粛はせず、子どもたちに負担がないよう工夫しながら運営していました。そのようなさまざまな状況や思いのなか、地域との交流の場としてできたのが「いろどりキッチン」です。

(園内の様子。疏水沿いに建つ建物の2階に伏見いろどり保育園はあります。)



一人ひとりが安心して過ごせる場所を


Q.0から保育園をつくるとなると大変なことも多かったと思います。そのあたりは、いかがですか。

 自分たちの保育理念をスタッフのみなさんに共有していくことがとても大変でした。今でも努力しているところです。子育ても保育も正解がなく、決まりがありません。「ご飯を最後まで食べれることがすごいね」という先生もいれば、「ご飯を楽しく食べれることがすごいね」という先生もいらっしゃいます。どちらがいい悪いということはありません。

 しかし、園の方針としては、統一性をもたないといけません。そのため、保育理念である、「一人ひとりの子どもたちに安心して過ごせる場所を」ということを基準にしています。月齢が高くても低くても、それぞれが安心して過ごすことができるようにしています。


Q.保育士さんとして、園長として、日々の業務も大変かと思います。そのなかで働いておられるなかで嬉しい瞬間はどのようなときですか。

 保育士でも学校の先生でも、我が子に腹が立つときもありますし、うまくいかないときもあります。そのような子育ての失敗談をお話しするとお母さんたちが共感してくださいます。先生が保護者に教えるのではなく、対等な立場でお話しをしているときはとても嬉しいです。

 また、卒園児が毎日のように遊びにきてくれます。卒園したにも関わらず、私たちの保育園を好きでいてくれることがとても嬉しいです。卒園児たちは、新しい保育園での様子や思いを話してくれます。自分の気持ちを整理したり伝える時間になっていると思います。親御さんにとっても、私たちと話すことで孤独な子育てを防ぐきっかけになっていると嬉しいです。

(自分たちでお花を生ける体験をということで実施された、「フラワーアレンジメント」)



地域のための基盤となる場所でありたい


Q.お話を聞いていると、小規模保育園は少人数の子どもたちを丁寧にみてくださるという印象を受けました。運営されるなかで感じておられることはありますか。

 実際のところ「待機児童問題解消のための施設」、「大規模保育園に行くことができなかった人が行くところ」と思っている方もいらっしゃいます。小規模保育園に対して世間の認知が追いついていないのはとても残念です。

 そのなかでも、実際に見学に来ていただくと「こんないい保育園があったんですね。」という声をいただきます。親御さんの理想の保育園とリアルな保育園がマッチしていないことがとてももったいないです。小規模保育園のよさをもっと広げていきたいです。

 乳児の異年齢保育ができるという点は、小規模保育の特徴の一つです。異年齢保育は、年下の子が年上の子に憧れの気持ちをもち、成長を促進すると言われています。しかし、私は年上の子が年下の子を労る姿や優しく接している姿を大切にしています。優しく接するためには加減することが必要です。例えば、手をつなぎ散歩に行く際も、力加減を考えずに引っ張るとこけてしまいます。そこの加減する力というものが、幼児さんにむかって成長してる子どもにとって大切なのです。


Q.保育園は、親御さんや子どもたちが集う場所ですが、地域との関係性や接点はいかがでしょうか。

 保育園に対する私の考え方の1つとして、地域のために子育て支援の基盤となる場所であるべきだと思っています。もちろん預かっているお子さんのためにあることは大前提です。小規模保育園は、地域に溶け込みやすい場所と思っています。まちの電気屋さんのようなイメージです。子育てに関することでわからないことがあれば、気軽に聞きに来ることができる場所、開かれた保育園でありたいと思っています。

 2021年10月31日に墨染寺で「お寺deハロウイン」というイベントを行いました。子どもたちを対象にしたイベントで地域のみなさんや大学生などが手伝ってくれました。イベントで使用するお菓子の寄付なども多くいただき、改めて、素敵なまちだと思いました。イベントなどを通して、少しずつ地域とつながり始めた実感を持ちました。保育園同士のつながりももちろん大切ですが、地域のなかでもきちんとつながっていきたいです。


Q.地域との接点も少しずつできてきたということですが、今後について教えてください。

 これからの未来を担うのは子どもたちですが、すぐ先の未来を担うのは学生さんです。小規模保育園がどのようなところなのか、保育を学ぶ学生さんは、専門分野なので知っていると思いますが、専門でない学生さんにも知ってほしいです。

 現在、京都市内で小規模保育は約130ヶ所、大規模保育園が約200ヶ所と数でみると大きく違いはありません。また、最近は、子どもの主体性や非認知能力などの話は、乳児の間にどのような関わりをしたかが大切になってきます。そのような保育園や子育てに関することを知るきっかけに私たちがなれればいいなと思っています。

 昔は、幼稚園に行くか保育園に行くかの二択だけでしたが、今はさまざまな選択肢があります。選択肢が増えるということはとてもいいことです。ご自身のお子さんに会う保育園、ご自身の子育ての考え方と合う保育園を選んでいただきたいです。今は、情報がたくさんあり、選ぶことも難しいと思います。保育園が子育て世帯だけでなく、地域の人にとっても身近な場所になるといいなと思っています。

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