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執筆者の写真伏見いきいき市民活動センター

【UTTOCOな人】服部加奈子さん_vol.45


活動スタートから1年で教育関係者に対して活動報告をするほど、今注目の集まっている「京都子ども新聞」。『学校教育に新聞を』と、新聞の価値が見直されている昨今において、ただ取材に行くだけではない、人と人とのつながりや子どもの地域参画に向き合い活動されている思いについて、編集長の服部加奈子さんにお話をお聞きしました。



子どもの参画が地域を変える


Q.団体について教えていただけますか。

「子どもの地域参画」を目的に、子どもたちが地域を取材することを通して「四角い頭の大人と子どもの参画で地域を丸くする」ことを目指して取り組んでいます。地域で開催されているマルシェやバザーにブース出店し、他の出店者さんに取材をしたり、「わくわくワーク枠」という手作りのフレームを用意して新聞を作成しています。

「わくわくワーク枠」は、普段なら素通りしてしまうような気づきや驚き、発見に満ちた「子どもたちが見ている世界」を見える化するアイテムです。このわくわくワーク枠があれば、大人から子どもまで誰もが取材を行うことができるようになります。ニュースは驚きを発見し、人に伝える媒体だと考えています。子どもたちにとっての驚きをこのフレームで切り取り、見える化することで、大人にとっても気づきや考えるきっかけになればと取り組んでいます。

今の子どもたちはこんな風に物事を感じているんだと知ることで、大人の幼心が思い出されます。子どもたちの新聞活動を通して、大人がまちに人に「なんでやねん!」と感じることで興味をもったり、関わるきっかけになればと思います。幼心が社会を面白くし、それを受容できる大人が地域に増えれば、まちは変わっていくと思います。


Q.活動を始められたきっかけはなんですか。

最初は、地域と関わることの必要性をあまり感じていませんでした。きっかけの一つは、約5年前の台風の際に職場の近くで倒木があり、その影響である地域が孤立してしまいました。ライフラインが止まり、陸の孤島となった地域のなかで、自治会に入っている人は誰がどこに住んでいるか、などの把握がすぐにできましたが、未加入の方は把握が進まず、物資が届かなかったというお話を聞きました。このとき、地域でのつながりの大切さを身近に感じました。

それから、どうすれば安心して暮らすことができるのか、どうすれば互いに助け合うお互い様の関係性や、身近な人との信頼関係を築いていけるのかを考えました。そして、幼少期からの地域との関わりが将来の暮らしを充実させるのではないかと思うようになりました。

人生の歩みのなかで、人は急には変われないと思います。小さいときからの経験を通して、コミュニティのなかでの暮らしを当たり前にしておくことが大事だと思いました。

そのような経験を子どもたちにさせてあげられるものは何かと考えていた時、「かめおか子ども新聞」に出会いました。子ども新聞の取り組みを私もやってみたいと思い「京都子ども新聞」をスタートさせました。


(取材風景)



誰もが参加できる枠組みを


Q.子どもたちが取材に行く際に、仮説を立ててから取材に行ってもらうようになったきっかけは何ですか。

普通に取材に行くだけでは、子どもたちに感想を聞いても、「良いと思った」、「面白かった」しか返ってきません。しかし、それは、本当に思っていることや感じていることはあるけれど、それを言語化することが難しいからだと思います。大人でも100%感じていることを表現することは難しいですし、言葉数の少ない子どもなら尚更です。そのため、もっと子どもの感性を表現することができ、本当に思っていることを引き出すにはどうしたら良いかを考えました。その結果、最初に想像していたことと実際のギャップを感じることができれば、子どももアウトプットしやすいと気づきました。

子ども新聞は、自分の見た事や聞いたことのイメージをまだ知らない人たちに伝えるためのもの、「こんなことがあった」、「こんな風に感じた」などを表現するものと思っています。


Q. 活動のなかで大事にされていることはありますか。

小学生を対象に、京都子ども新聞の活動は展開していますが、その理由の1つがメディアリテラシーを学んでもらうためです。

将来的に、多くの子どもたちがSNSを使うと思います。メディアで発信される情報は、どの部分が切り取られているのか、どのような見方から発信されているかで大きく変わります。いろいろな見方があることを知るのも大事ですし、自分が発信するときに思っていた通りに相手に伝わらないことがあることを学ぶ必要もあります。

取り組みを通して、そのような学びを得てもらいたいと考えています。そのため、京都子ども新聞は、顔の見える形でコミュニケーションをとりながら、相手から聞き伝えることを大事にしており、あえてアナログと言われている新聞という媒体を使って行っています。


(わくわくワーク枠を使って取材をしている様子)



目指すは全国展開


Q. 活動のなかで思い出に残っているエピソードはありますか。

マルシェやバザーなど地域のイベントで取材をさせてもらうことが多く、地域の大人と子どもたちに接点が生まれたことはとても良かったです。

あるイベントで、有機野菜を育て、販売しているおばあちゃんのところに、子どもが取材に行くことがありました。おばあちゃんは、京野菜のことを詳しく話してくださり、「地元の野菜を大事にしてね」と子どもたちに伝える姿を見たときに、このおばあちゃんは普段から子どもたちに京野菜のことを伝えたかったんだなと思いました。子どもたちも、給食で京野菜のことを勉強しており、会話が弾んでいました。

子ども新聞をきっかけに、おばあちゃんと子どもたちが話す機会をつくることができました。そのうえ、おばあちゃんの思いを表現することや子どもたちの学校での学びをリアルにすることができ、この活動の面白さに改めて気づきました。


Q. 今後の展望についてお聞かせください。

夢は、全国の各校区に子ども新聞を広めることです。新しくつくっていくというよりも、すでに人が集まっているところにプログラムとして広げていきたいと思っています。

ここ数年で子ども食堂などが全国的にも増えており、そのような場を活用できればと思っています。子ども新聞を始めてもらえれば、子どもたちと会話するきっかけにもなりますし、子どもたちと地域が交流を持つきっかけにもなります。

実際、最近は深草子ども食堂で毎月実施しています。少しずつですが、取り組みの輪を広めていきたいです。



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