藤森駅の近くに佇む、株式会社スマイルワーク。「障害があっても働きたい!」、「何か活動してみたい!」という想いのある方を応援する事業所です。代表の大門和彦さんは、かつてはプロ野球選手という異色の経歴の持ち主。華やかな世界で活躍された後、なぜ自身で起業し、今のお仕事しておられるのか、お話をお伺いしてきました。
みんなが笑顔で働ける場所
Q:スマイルワーク、はじまりのきっかけはなんだったのですか?
障害という言葉から誰しもそうだと思うのですが、身体の重度の方をイメージされるのではないかと思います。しかし、NPO法人就労ネットうじ みっくすはあつさんに行ったとき、そういう方も少しはおられましたが、ほとんど見た目ではわからない、精神的な部分でした。深く話を聞いていくうちに何か我々にもできないかと思ったところが、きっかけです。
もともと、みっくすはあつを「応援したい」という思いから個人的に少しずつですが、支援をしていた関係で、みっくすはあつの小畑さんとは、数十年来のお知り合いでした。
(NPO法人 就労ネットうじ みっくすはあつ http://mix-hearts.com/)
Q:スマイルワークという名前に込めた想いはどのようなものですか?
「笑顔で働こう!」そこだけですね。どうせ働くのであれば、その時はしんどいかもしれないけれど、達成感があったり、笑顔になったり。そういうところは大事にしたいなと思っていますね。
「もったいない」という想いから生まれた事業
Q:もともと野球をされていた大門さんですが、野球ボールを修復するエコボール事業は、すでに想いがあったところからスタートしたものなのでしょうか?
たまたま母校を訪れた、倉庫を見ると糸が解れたボールが山積みになっていました。僕が選手のときは、学校から持って帰って、糸と針を使って自分で縫っていました。そして、それをまたグランドに持って行くというのが当たり前でした。
「これどうするんですか?」と聞いたら、「ティーボールにするしかない。今の子たちは、縫わないんだよ。」その言葉を聞いて、もったいないと単純に思いました。その時に、思い浮かんだのが、小畑さんでした。「これ、縫うことできないですか?」と提案したら、「一回ちょっとやってみます。やり方わからないので、いいですか。」ということで、教えに行きました。
学校に対して、「ボールが再生したら、学校としてもう一度買い戻してもらえますか?」と尋ねました。それが障害者さんの工賃になるという話をしたときに、「それならいいよ。買い戻すよ。」と言っていただきました。この事業は母校から始まり、徐々に広まっていきました。
※ティーボール…革も糸もほどいて、ビニールテープを巻き、違う用途のティという打撃用にしか使えない形
(右が修復前、左が修復後。現在、この取り組みを行っているのは全国で150校ほどある。)
Q:職員さんが縫い方や仕事の仕方などすべてを教えておられるのですか?
利用者さんの中にもスペシャリストがいます。その人が教えることによって、プライドも持ちますし、責任も持ちます。すべて自分から放射線状に言うのではなく、利用者さんが伝えていくということのほうが大切なのかなと思っています。
うちは、着物の撮影もしています。今、1着8カットで1日100着ぐらい写真を撮るときもあります。着付けも写真も業者へのメールも利用者さんがやります。スタッフが全部入りません。セットは、業者が貸してくれていて、この間は1日140着撮影しました。変わったことをやりたいなとずっと思っています。
次の世代に受け継いでいくということ
Q:ご自身の中で大切にされていることは、なんですか。
信頼だけです。もうその一言につきます。というのは、自分一人でできることは限られています。一人でやろうと思うと無理じゃないですか。自分の思いがあって、「こういうことやってみたい」と思ったときに、それに賛同してくれる人がいて初めて成り立つと思います。
みんなが責任を持ってやってくれているから、利用者さんも楽しくやっていると思います。すごく当たり前の話ですけど、馴れ合いはすごく嫌なので、事業自体にはすごくまじめに取り組んでいます。利用者さんに少しでも多く工賃をとってもらうようにすることが我々の本来の仕事なので、そこにはこだわっています。
Q:福祉や支援といった同じ文脈で働いているみなさん、そういう分野に関心のあるみなさんにメッセージをお願いします。
若い人やこういう業界の人たちはもっと目立っていいと思っています。どうしても、一般のビジネスの人たちと同じ場所に行くと自ら遠慮しているような人が多い気がします。そうではなく、ビジネスとしては同じですし、いい形で社会に貢献しているのではと思います。
私のもともとのコンセプトが社会起業家というものになりたくて、起業しています。社会起業家は、日本ではあまり浸透していませんよね。でも、アメリカや欧米では、そういう形でやっている企業は、とても発展しています。あくまで、社会課題を解決していく、社会起業家になりたいと思っています。そのうえで、若い人たちが同じようにどんどん後を引き継いで、自分で全部やれるようになっていってほしいです。思いという一本、筋の通った中で、どんどん広げていくべきだと思います。そうやって、若い人たちが活躍していってくれるといいですね。
株式会社スマイルワークHP http://www.smilework.jp/