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【For Localプロジェクト】NPO法人 京都子育てネットワーク 理事長の藤本明美さんへインタビュー

更新日:2020年7月19日

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京都子育てネットワークさんは、子育て支援の情報発信、居場所づくりを中心にお母さんたちを支え、また、支えたい人の想いをカタチにするNPO団体です。

子育て、妊娠、慣れない状況での子育て。その中でも、シングル、共働き、様々な状況のお母さんたちがおり、多かれ少なかれ誰もが戸惑いを感じる妊娠や出産に対しての要因が、地域社会にはかなり多く存在します。その中で、NPO法人京都子育てネットワークさんでは、京都市からの委託を受けて居場所運営を行ったり、「安心できる居場所」を目指していくために、中間支援団体として、サークルさんたちの居場所の立ち上げや、運営をサポートしていく事業も行っています。

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Q.京都子育てネットワークさんが感じている地域での子育てに関する課題や、活動に対しての想いについてお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

私達は、地域の中で循環型の子育て相互支援を目指し、地域で「安心できる居場所」と「子育てしやすい関係性づくり」を構築できるように事業を展開しています。


お母さんたちはそれぞれで子育ての考え方も環境も違います。様々な境遇を持った中で、「子育て中」という共通点で出会います。その際に、必ずしも一般的な“おともだち”という関係性を無理に作ってしまうと、居づらくなったり、訪れづらい居場所になってしまいます。私たちはそれを乗り越えるように活動しています。実際に、お母さんには、日本語が母国語でない方、障がい者の方、アレルギーをお持ちのお子さんの子育てをされているお母さんなど、本当に様々な環境をお持ちのお母さんがいます。そのような違う境遇同士のお母さんでも、「違っていても支え合っていこう」といえるような、関係性づくりを大切にしています。


また、ただ単に子育てサポートのみではなく、お母さんたちの「強み」をひきだしつつ、だれもが「誰かの役に立てる」と感じられるような居場所を目指しています。些細なことでも、感謝し合い、メッセージがもらえる居場所にすることによって、主体的にお母さんたち、つまり当事者自身が参画できるように意識しています。お母さんたちも子育てがひと段落すれば、社会との繋がりがより強くなってきます。そういった際に、お母さんたちが再び社会に進出しやすくするために、強みを引き出し、誰かの役に立てると感じられるような居場所づくりを行っています。支援者だけでなく当事者同士がお互いに支え合う社会が「安心できる社会」だと思っています。


   (NPO法人京都子育てネットワークさんが目指されている地域の循環の形) このような子育てのスタートの「居場所づくり」、当事者同士の「関係性づくり」、主体的に社会参画できる「環境づくり」の3つの柱で行うことによって、循環型の子育て相互支援を目指しています。


Q.京都子育てネットワークさんのこれまでの活動への実感はどのように感じられていますか。

私たちの活動は、乳幼児期の子育てサポートに特化した活動のため、お母さんたちの入れ替わりが短期間であり、団体の中で成果を積み重ねていくことがとても難しいです。しかし、私たちも20数年間活動をしてきて、「以前のあの活動はどういった意味があったのだろうか?」と振り返ることが多くなりました。


そこで、サークル活動を体験してから約20年たったお母さんたちが地域の中でどのように過ごされているのかを知るために、追跡調査を行いました。ソーシャルキャピタル(地域の中で信頼できるネットワークが形成できているかどうか、過ごしやすい地域社会ができるかどうか)が地域で広がっているかを他の調査と比較する方法を採用し、アンケートを行った結果、地域の中で確実にソーシャルキャピタルが形成できているということが数値として分かりました。

単年度(乳幼児期の子育て)で行っている活動だとしても、子育てのスタートから経験したものが、地域の中で生き続けて、ネットワークが広がり、深まり続けているということが可視化できたことが大きな成果でした。団体の全体の成果は単純には測り切れないことばかりですが、「安心できる居場所」「横の繋がりの形成」はできていると思います。


子育ての居場所も、口コミや横のつながりから訪れてくるお母さんも多いです。保健センターの方からの声掛けや、定期健診でたまたま出会ったお母さんに、「こういうところでいつも遊んでいるよ」と利用しているお母さん自らが誘い、誘われて参加したお母さんが今度はまた新たな方を誘う立場となってどんどん循環していきます。それでも初めての場所を訪問することは様子がわからず勇気がいります。できるかぎりバリアをなくし参加しやすい居場所をつくることも意識しています。扉のない誰もが立ち寄る場所であるスーパーなどで出張ひろばをしたのをきっかけに、参加される方も実際に多くいらっしゃいます。


Q.藤本さん自身が目指されている社会、地域とは、どのようなものでしょうか。


災害が起きるたびにコミュニティの大切さを再認識することも多いですが、日常生活では面倒なものとして扱われる傾向があります。しかし、親も子も安心して生活するには地域の色々な人や資源とのつながりが必要なのは昔も今もこれからも同じだと思います。失ったコミュニティの力を取りもどすのは一人では切り抜けられないピンチを抱え込んでいる子育て世代がチャンスだと思っています。


困っている時に地域でうれしい出会いや安心できる体験をする機会や場がある、それぞれの持っている力を認めてもらえる場や人がいる、そんな体験をした人は自然に意識が変化し、受け入れる存在に代わっていく、そんな大人たちが懐の深い地域をつくり、その地域の中で子どもたちが育ち、大人になっていく・・・そんな地域がいいなと思います。この循環が高齢者社会も支えるつながりへと広がることを願っています。そのきっかけとなる種まきをしています。

  (深草商店街ふかふか家「ふかふか子育てコミュニティベース」にての活動の様子)


Q.地域全体として安心できる居場所を構築していくために、そもそも子育てに関わったことのない、関わっていない地域住民にどの段階で、どのような関わり方の選択肢があると思いますか。

関わってくれているボランティアの方も、子育て経験のある方が多いです。お父さんたちも、自分で参加したい、ここには自分の楽しい役割がある、と捉えて自己肯定できなければ、積極的に参加はすることは難しいです。そのようなことも含めると、地域住民側からアプローチをかけることはハードルが高いため、イベントであれば、いかに地域の住民参加を巻き込んでいくかが重要になってくると思います。


地域の市民活動としてお母さんたちを「支えていこう」だけではなく、お母さんたちが考えたことに「乗っかる」位で参加することが良いのではないかと思います。子育てを直に手伝うのではなく、講師などの立ち位置で「○○について伝えにきてよ!」というお母さんのお誘いから始まる参加が具体的な選択肢として挙げられるのではないかと思います。

      (深草商店街の100円商店街にて、お母さんたちが参画している様子)

 

Q.前年おこなった取り組みや企画があれば教えていただけますか。


「子育てあるある 日めくりカレンダーコンテスト」を行いました。近年、お母さんたちが仕事などで忙しくて、なかなかサークル活動へ自主的に動くことが難しく、向き合い方へのハードルが年々上がっています。もっと参加のハードルが低く、かつ自主的に楽しんで取り組める企画として、このカレンダー企画が始まりました。


お母さんたちが少人数(4~5人)でチームを組んで一緒に手作りのカレンダーを作ってもらい、賞金付きのコンテスト形式で実施しました。投票制度にもこだわり、一般の方も投票できる来場者審査を設け、京都信用金庫さんなどで投票ブースを設置させていただき、子育てに触れることのなかった10代~80代からの多くの投票が集まりました。また、男性からも多く、来場者投票を設けたことにより、「子育てあるある」を知ってもらい、社会からの子育てへの共感を生み出すことができたと感じています。また、大賞に選ばれた作品は地域のお母さんたちに無料配布し、手に取れるようになり、当事者同士の子育てあるあるの共感もさらに生まれ、循環型の相互支援になったと感じています。

(「子育てあるある日めくりカレンダー」https://kkn2019karenda.exblog.jp/)


Q.このコロナ禍のなかでどのような活動をされていますか。また、状況での子育てにどのような課題があると感じられていますか?

対面での活動はストップしているため、(5月24日現在)「オンライン子育て広場」を中心に活動しています。「オンライン子育て広場」に対する印象や現在の過ごし方についてお母さんたちを対象にアンケートをとったところ、半分以上の方が「誰とも話していない」という状況でした。またそのうち9割の方が「オンライン子育て広場に参加したい」という声がありました。しかし、セキュリティ面での不安や、子ども泣いてしまったときにどうすれば?など、不安要素もお持ちです。そのため、安心できる状況や不安要素を除いていくことがオンライン子育て広場には今後必要だと考えています。


オンライン子育て広場は、あくまでも緊急措置として、コロナ禍の暗い状態の中で、ポジティブに、前向きに子育てを考えられるようにするため、また対面であった際には、「あのときオンラインで会ったよね」とワンクッション挟むことができるような関係性をつくることを目標としています。オンラインならではの利点、難点はあるので、それらも考慮しつつ、あくまでも対面式の居場所が一番大切だと理解した上で実施していこうと思っています。


Q.寄付制度などは設けられていますでしょうか。また、設けていた場合、どのように活用される予定でしょうか。

賛助という形で設けています。また、今後もう少しスムーズに賛助をしやすいようにホームページに新しい枠を開設しようと考えています。


用途としては、「オンライン子育て広場」の実施を中心に活用させて頂きたいなとおもっています。 実際に京都子育てネットワークがおこなったオンライン子育て広場の経験と、「オンライン子育て広場」についてのアンケートを踏まえて、お母さんたちの「当事者側」のニーズや不安について調査し、また、オンラインでの取り組みに挑戦しようとしているサークルや団体などの、「支援者側」へレクチャーの仕方、ファシリテーションの在り方を考えるガイドラインを作成しました。前年おこなった日めくりカレンダーや、対面式が可能になればそちらにも使用していきたいなと思っています。


NPO法人 京都子育てネットワーク

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担当スタッフからのひとこと

今回初めて、京都子育てネットワークさんにお話を聞いて、地域社会と子育てのしやすさが密接に関係していることが改めて実感致しました。地域社会で子育てをサポートしていくこと、支援者だけでなく当事者同士の支え合いが存在することによって、安心できる、信頼できる地域社会になっていくということを目指し、楽しみながら模索しつつ変化を遂げる京都子育てネットワークさん、理事長の藤本さんのお話を聞いて、本当に活動への想いを持った素晴らしい方が集まるNPO団体さんだと感じました。


居場所や関係性の大切さにとどまらずに、お母さんたち自身が個人として社会に役に立っている実感を心からもってもらうような環境づくりに注力されていていること。また、このコロナ禍でも、足を止めることなく、情報発信やオンライン子育て広場を中心に動かれている姿を拝見させていただき、私たちも市民活動センターとしてどのようなことができるのか、何を担うべきかを改めて考えさせられる機会となりました。本当にありがとうございました。             

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