
暮らしのコーディネート、株式会社ONE STAR。住宅やマンションの設計、工事、メンテナンス、リノベーションを行なっておられる、建築の会社です。設立して間もない会社とのことでしたが、そんな中でも、さまざまなことにチャレンジされている姿勢がとても印象的でした。
今回は、そんなONESTARの、所長の永岡洋さん、一級建築士の永岡早苗さん、アドバイザーの馬場彩佳さんにお話を伺ってきました。
自分たちの目線で
Q:家を建てることやリノベーションすることだけでなく、引っ越しの荷造りサービスや荷物の一時預かりなども行なっておられますよね。これは、どこの建築事務所でも行なっていることなのでしょうか。
早苗さん>
今まで勤めていた会社では、ここまでのサービスを行なっていませんでした。しかし、この会社を立ち上げた時、私が”ママ”なので、自分目線でするということは、他のお母さんと同じ目線で住まいづくり考えられるのではと思いました。自分が「こういうものがあったらいい」をサービスとして行なっています。
そんな思いから生まれたサービスのひとつが、引っ越しの際の荷造りサービスや、リフォームなど家の工事をする際の、家具・荷物の一時預りサービスです。ご主人さんがお仕事で忙しく引っ越し準備を手伝うことが難しかったり、共働きで子育てが忙しかったり、そういうお母さんが、引っ越しに関わることすべて一人でやるのは大変です。そういったところを解消したいという思いから始めました。
また、子育て世代だけでなく、高齢者の世帯でも、重たい荷物を運ぶことができなかったり、たくさん荷物があるだけで、マイナスな気持ちになったりしまいます。それだけで、リノベーションやリフォームを諦めている方もたくさんいらっしゃいます。少しでも、私たちスタッフが手伝うことで、リフォームしたいという前向きな気持ちになってもらえれば嬉しいです。
Q:最近、テレビなどでもよくリノベーション住宅(中古住宅に新たな価値を生み出す方法)が取り上げられていますよね。ONESTARもリノベーションに力を入れておられるように感じたのですが、いかがでしょうか。
早苗さん>
今、空き家が、大きな問題になっています。新しい家を建てることもいいですが、空き家が増え、古い家ばかりが残ってしまいます。思いある家を新しくリノベーションして、住んでもらう方が私は好きです。
費用面でも新築より安いので、壊してすぐ新築というのではなく、一旦リノベーションできるかを考えます。相当古い家で、壊して新しく建てても同じくらいの費用であれば、新築を勧めているのですが、まだ直せる家であれば、家を拝見したときにリノベーションを提案しています。
宇治などは敷地が広いため新築を建てても、同じくらいの広さの建物を建てることができます。しかし特に伏見は家と家が詰まって建っているため、新しい建築基準法に沿って建てると、空間の広さがとれないという問題がでてきますので、リノベーションされる方が増えています。

(ONESTARの事務所内観。入った瞬間、木のいい香りがします。)
同じだからわかる気持ち
Q:ONESTARのHPやチラシで”ママ”、”女性”という言葉が使われています。永岡さんご自身も”ママ”であり、スタッフも積極的に”ママ”を募集されています。やはり、そこにこだわりがあるのでしょうか。
早苗さん>
個人的に、「お母さんの力はすごい」と思っています。アイディアもそうですし、住まいをつくるときの中心はお母さんです。他のお母さんから様々なアドバイスを聞くことで、考えが広がります。
暮らしの中で、「こうすると使いやすいのに…」、「こうなっているのが、いや」と思うところを、お母さんたちが話している光景は、ただの愚痴のようですが、「やっぱりみんなそう思っている」、「そこが直さないといけないところ」と話している中で確信できます。自分だけでなく、みんなもそう思っているということを感じることができていいですね。
馬場さん>
私たちスタッフも、図面を見させてもらったとき、「これなら、洗濯も掃除も、炊事もやりやすい」と思います。「でも、ここをもう少しこうしたほうが動きやすいのでは」と話をしていたりするときは、とても楽しいです。どのお母さんたちにとっても、苦じゃない家にしたいというのが、我々の思いです。
Q:子育てをしながら働くことは、とても大変なように私は感じています。ご自身で、女性が子育てをしながら働くことや社会で活躍することについて何か感じたことはありますか。
早苗さん>
私が「多くのママスタッフに働いてほしい」と思うようになったきっかけは、私が第一子を産んだ時に勤めていた会社で感じたことが大きいです。
私の子育ての状況を理解し、常務さんが目をかけてくださいました。会社自体はとても古い会社で、年配の方が多く、若い人は少なめで、私だけがお母さんでした。妊娠し育休も頂きましたが、私が初めての事例でした。
常務さんの気持ちはとても嬉しかったのですが、優遇されている目で周りから見られ、初めての育休をもらうほど特別待遇なら、仕事ができると思われたり、変に期待されたりしたこともありました。同じような状況の方がいなかったことで悩んだ事もありました。みんなが同じように育休をもらえる状況なら、そういう悩みはなかったんだと思います。
私は会社をつくったときに、子育て世代のお母さんみんなが分かり合えるという環境にしたいと思っています。
洋さん>
仕事をしたくてもできない、能力のあるお母さんはたくさんいます。この会社を始めて改めて気づかされました。どちらかというと、僕は男性ばかりの中で働いてきたため、そういうことがわかりませんでした。
地域ともつながりながら
Q:会社の中に、誰でも利用することができるフリースペースがあったり、親子向けワークショップをされていたりと、さまざまな取組をされてますね。
馬場さん>
お母さんが集まってされている日常会話の中に重要なヒントがたくさんあると思います。お母さん達がリラックスして井戸端会議ができる所として使ってもらえるように、事務所の一角を無料で提供しています。しかしまだ認知されておらず、気軽に使ってくださる方が少ないです。子どもが少し騒いでも、リラックスして話せる場所でもあるので、ぜひもっと使ってほしいなと思っています。
また、そのスペースでは様々な子育てを応援するワークショップを行っています。講師はママのつながりからなってもらっています。ヨガを行っているのですが、その先生も私の友人です。8月からはお料理教室もはじめたのですが、講師は偶然ですが、娘と同じクラスの子のお母さんです。ぜひ一度来てみて下さい。
洋さん>
行っている様々なイベントは、自分たちでできる事から考えているものもあります。例えば、子どもの夏休みイベントとして、貯金箱づくりを行ないました。近々行おうと思っているイベントは、お菓子の家づくりです。専門的なものは、講師の方をお招きしてやっていただいています。

(キッズイベント、貯金箱づくり。リピーターもいらっしゃるほどの人気イベント。)
Q:今後、挑戦していきたいことはありますか?
洋さん>
2016年2月にこの会社を設立しました。まだまだ新しい会社なので、これから認知していただけるように、ワークショップやイベントを通じて地域の方が集まる場として提供し、必要とされる会社に育てていきたいです。
早苗さん>
自分だけでなく、ママがたくさんいる会社をつくりたいと思っています。1人ひとりは、短い時間でしか働くことができないかもしれませんが、集まるとたくさんのアイディアが出てくると思います。
住んでいるまちでママ向けの取組をしていると、友人を通して、広がっていきます。働いているママスタッフによって、少しずつ取組が広がり始めています。