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執筆者の写真伏見いきいき市民活動センター

【UTTOCOな人】勝部 惠子さん Keiko Katsube_vol.23 2017


 伏見の市民活動団体やまちづくりイベントなどさまざまな場面で勝部さんを見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

 長年、福祉の現場でお仕事されている勝部さんですが、自分の思いとシニアの声を大切にして、挑戦し続けておられます。今回は、そんな勝部さんを取材させていただきました!

一人ひとりを大切にしながら

Q:27年度・28年度の伏見区区民活動支援事業として実施された、『活きいきお出かけ応援プロジェクト』とは、どのようなものですか。

 2015年の春、深草の疏水沿いで桜のライトアップが行われました。その時、「一人でも多くの高齢者にこの綺麗な桜を見て欲しい」と思い、『鴨川運河を歩こう・ゆっくりお出かけコース』という取り組みを行いました。そして、その年の7月から伏見区区民活動支援事業の助成金をもらい『活きいきお出かけ応援プロジェクト』を始めることになりました。

 私は、訪問介護の仕事を約10年していました。その中で、介護保険内でできないことがいくつかありました。例えば、電球の交換、通院・入退院時の付き添いや庭の手入れ・水やり・草取りなど人の生活に必要ですが、できません。介護保険外の取り組みの1つとして、引きこもりがちな高齢者に外に出る機会をつくることができるかもしれないという思いもありました。

Q:28年度で活動をはじめて2年目ということですが、当初はどのようなことから始めていかれたのでしょうか。

 一年目はチラシを作り、深草地域の地域包括センターやケアマネさんの事業所を訪問し、「外出したくても一人では外出しにくい人がいたら紹介してください」とチラシを置いてもらいました。何件か申し込みがあり、感触は悪くありませんでした。

 二年目は、人が集まる場所に行き、スタッフ学習会を実施しました。スタッフとして活動してくれそう方を見つけ、育てることもプロジェクトとの役目です。

 現在、私たちだけで行き届いた広報をするにはまだまだ力不足なため、高齢者に関わる人たちの場に行き、学習会を行い、声かけに努めました。また、引きこもりがちな人を外に連れ出すことだけでなく、事前に引きこもりを防ぐことにも力を入れました。

Q:お出かけの内容は、どれもとても印象的なエピソードかと思いますが、一つエピソードを聞かせてもらえますか。

 2016年の秋に東福寺に紅葉を見に行きました。この方は、2年がかりで「お出かけしませんか」と声をかけ続けていました。治療中で病院への受診は、月に1〜2回行かれていましたが、病院に行くことで精一杯で、それ以外は特に外出されていませんでした。本人にその気がないときに声をかけても響きません。しかし、この人にとってお出かけすることはいいと思い続け、声をかけていました。

 そして、今年も「お出かけプロジェクトしますよ」と言うと、体の調子が良いのか、気分も変わったようで自分から「行ってみようかな」と言ってくれました。

声をかけ続けていたら、チャンスは必ずきます。だから、間口だけ少し開けておいて、余裕ができれば、「お出かけしてみようかな」と思ってもらえるようにしています。

 二年間活動し、一人ひとりに事情があり、外出の大切さがわかることで続けないといけないと感じました。手間がかかるところで学ぶこともありますが、こんなペースでいいのかなと思っています。笑 しかし、一つひとつのことを思い出すたびに本当に一緒に行かせてもらってよかったと思い、続けています。

(お出かけプロジェクトで南禅寺に。)

風をおこす存在として

Q:『活きいき生活応援センター うふふ』もされていると聞いたのですが、そちらはどのようなものですか。

 活きいきお出かけ応援プロジェクトは、ボランティアでやっていて『活きいき生活応援センター うふふ』が本業なんです。

 2014年の10月に伏見区の高齢者を対象とした、介護保険外の訪問介護の仕事として『活きいき生活応援センター うふふ』を起業しました。仕事内容は、大きくわけて、家事、付き添い・見守り、代行・相談、介護を行なっています。介護保険の枠内でできるものは枠内で行うようおすすめしています。

 始めて2年半になりますが、利用者の数が130人を超え、約1500件の依頼がありました。私たちスタッフがお手伝いすることで、みなさんの暮らしに笑顔(うふふ)を増やしていきたいという思いを込めて『うふふ』という名前にしました。

 活きいきお出かけ応援プロジェクトと同じ課題があり、一緒に活動できる決まったスタッフがもっと増えれば、もう少し広まると思っています。初めの一歩は踏めていますが、まだまだ段階を踏んでいかないといけません。

Q:訪問介護と聞くとご自宅を訪れ、ご本人ができないことを代わりにやってあげるというイメージがあるのですか、そのあたりはいかがでしょうか。

 ご本人ができないことは伝えていたたければ、私たちがやりますし、一緒にできることは、本人にも動いてもらいながらやります。本来は、介護保険が自立支援を促すものなので、介護保険内でもっとできればいいのですが、なかなか厳しいです。年々、時間が制限され、短い時間では多くのことはできません。

 『うふふ』をしていて思うことは、利用される方は、”やってくれる”と思っておられる方もいらっしゃいます。しかし、私たちは自分のことは自分でする、できた時の喜びを感じて欲しいと思っています。コミュニケーションを取りながら、自分で動けるように自立支援を陰ながら促すように頑張っています。「少し手伝うことで誰でも自立した生活を送ることができる」、「自分でまだまだできる」という実感は大切です。

(勝部さんのお仕事の一コマ。買い物したものを冷蔵庫へ。)

Q:生活しているお宅にお邪魔し、お仕事をされるというのは、その人の暮らしを身近に感じ、コミュニケーションがとても大切になってくるように思います。その中で、工夫されていることや気にしていることはありますか。

 私は、お仕事をする中で、常に余裕のもてるよう気配りをしています。余裕がないと仕事は雑になりますし、利用してくださる高齢者の様子を知ることもできません。その人のところにいるときは、その人と一緒に、その人の自立した生活を支えたいと思っています。

 いい雰囲気で家の中にさざ波をおこしたいです。他人が家に行くことでその時間だけでも生活が明るくなると「嬉しいな」、「生きているな」と感じるのではないかと思います。「勝部さんが来ただけで、明るくなるわ」と言ってもらい、淀んだ空気を外に出すように窓を開けたいのです。本当に部屋の窓を開けるときもありますし、窓を開けなくても、心の窓を開けて、さざ波をおこして笑ってもらいたいです。

思いを原動力に

Q:介護や福祉の現場に携わってきた勝部さんが新たな一歩を踏み出すにはどのようなことがあったのでしょうか。

 施設で仕事をしているときは、もう少し訪問介護を利用する人がやってほしいことをやってあげたいと思っていました。介護保険は、生活に密着したところを支援してくれますが、「+α」の支援が難しいです。人間が豊かに生きていると感じるところは、付加のところではないかと思っています。

 そんな中、定年を迎えました。仕事を続ける選択肢もありましたが、定年ギリギリまで考え、とても悩みました。しかし、後で振り返り考えてみると、悩み始めた時点で私は同じところでやっていくという選択肢を手放していたのだと思います。

 今していることが仕事になることもわかりませんでした。しかし、「こういうことをしたいけどできるかな」とあらゆる人に相談し、できることがわかりました。他にも自分が始めようとしていることをしている人がいることも知り、「それじゃできるわ!」と思い、新たな決断をしました。

Q:これからも勝部さんの活動は続いていくと思うのですが、ご自身の中で大切にされていることはありますか。

 私は、施設で仕事をしている時から”ピンチはチャンス”と思っています。例えば、周りの人がA案を持ってきたとします。「これは到底できない」と思ったときでも必ず新たにB案を出すようにしています。その形ではできないけれど、この形ならできると提案するということです。常に活動や提案については、前向きでありたいのです。

活きいき生活応援センター うふふ


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