伏見区羽束師から届く,つきたてのお餅 乾清絵さん
地下鉄竹田駅からバスで20分のところにある伏見区羽束師は,開発によって住宅が増えたとはいえ田畑が広がり,そばには桂川が流れる身近な自然が残る地域。
今回はその地で農を営む乾清絵さんからお話を伺った。
農を通じた女性のつながり
乾さんは宇治で生まれ育ち,結婚を機に伏見区羽束師に来た。農家に嫁ぐことは「実家も兼業農家でしたし特別なことでもありませんでした」。
結婚当初はご主人の両親が主に農作業を行い,乾さんは会社員として働くかたわら出荷の手伝いなどをしていた。
だが,羽束師に暮らすうちに「みんなといろんなことができたらいいな」とふと思い,地域に声をかけてみたところ20名ほど集まった。
それがJA京都中央羽束師支店の女性部の活動に発展していく。
メンバーの得意なことを「講習会」と称して伝え合い,これまでに廃油石鹸やフラワーアレンジメント,ガーデニング教室味噌作りなどを行ってきた。
現在約80名のメンバーが活動する中,平成14年から有志によるサークル活動として「羽束師ファーム」という畑での野菜づくりと朝市を運営している。
乾さんは羽束師ファームのリーダーでもあり,女性部の代表でもある。「言いだしっぺだからやめられなくって」と笑いつつも「無理なく,楽しく続けられたら」と気負わずに取り組んでいる。
その言葉通り,羽束師ファームでは農家も農家でない人も参加でき,メンバーの出席の義務もなく,来られるときに集まって野菜を作っている。
次世代に食の大切さを伝える
また,乾さんは京都市農業委員会の委員を務め,活動の一環として食育に取り組んでいる。
例えば,地元羽束師小学校の児童を対象に水菜を種から育て,収穫し,料理を行った。
「私は小さい頃から母親の後をついて農に触れていたので,自然に触れるこ
との大切さを感じますね」と乾さん。
子ども達が自らの手で作った野菜を収穫する喜び,採れたての野菜を味わう嬉しさなどを通じて,子ども達に生きる基本としての食の大切さを伝えている。
おもちづくりのきっかけとなった「ふれあい朝市」
久我自治会館で毎月第3土曜日に「ふれあい朝市」が開かれている。
知り合いに声をかけられてお餅をついて出したところとても好評だった。
新年最初の「ふれあい朝市」ではもちをその場でついて振る舞ったところ,スタッフも来場者もやわらかいお餅を手にしてとても幸せそうだった。「お客さんとの触れあいや,他に出店している人とも知り合いになれるのが楽しい」と乾さん。
つきたてのお餅を届けたい
「もっとたくさんの人にお餅を食べて喜んでもらえたら」と平成25年10月に羽束師古川町に,手作りの小さな加工所を設け準備を整えた。
一年を通してつく白餅とよもぎ餅のほか,秋~冬の期間限定で畑で育てた紫芋を混ぜ込んだ餅をつく。
もちのほかにラスクやかき餅,わらび餅も作られる。
田植えの際,除草剤を一度使うものの,「使わなくて済むのだったら使わないほうがいい」からと農薬に頼らずに育てている。
安心しておもちを食べてもらいたいという思いが伝わる。
そのお餅は現在じねんと市場,産直広場,八幡市にある「美濃山の朝採り市場」などの直売所へ毎日届けられている。
毎日,それも朝4時半から9時にお餅を作っているそうだ。できたてのお餅を味わってもらうために。
自分で米を育て,餅をつく。
「自分で作ったものを売って,お金を稼ぐことが好きなんよ。現実的やろか」と乾さんは笑う。
その先に喜ぶ人たちがいるからこそがんばれるのだろう。
直売所への販売,農協での活動,地域イベントへの協力など多忙な日々を送る中,自然に向き合い,色々な人たちと関わり合いながら,これからもつきたてのお餅を届けていく。
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■乾清絵さんプロフィール
宇治生まれ。羽束師在住。
JA京都中央羽束師支部女性部長
京都市農業委員会委員
好きなこと:旅行(今年はトルコへ京野菜を伝える旅に!)
伏見のおすすめ:羽束師神社の神輿(毎年五月第二日曜日に祭りが行われる)
■羽束師ファームのHPはこちら